• 一口にデザインといっても、グラフィックデザイン、プロダクトデザイン、インテリアデザイン、ファッションデザイン、サインデザインなどさまざまなジャンルと考え方がある。産地において、デザインを活用するにはどんなジャンルで考えればいいのか、3つの目的とそれぞれに3つのデザインを示した。

 

  •  <産地と企業の方向性を見定めるデザイン>

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  •  ①産地・企業の価値を明確化する  → ビジョンのデザイン


    • 産地と企業の過去と現状を分析し、あるべき姿を見据えて、解決すべき課題を設定する。そして、産地と企業が生み出す価値を明確化し、その創造のしくみと提供の方法を考え、具体化する。大きく変化する時代のなかで、5年、10年、30年、100年先を見据えたビジョンを描くデザイン。

    •  
  •  ②産地・企業のブランドをつくる  → ブランディングのデザイン


    • 産地と企業の過去と現状を分析し、あるべき姿を見据えて、解決すべき課題を設定する。そして、産地と企業が生み出す価値を明確化し、その創造のしくみと提供の方法を考え、具体化する。大きく変化する時代のなかで、5年、10年、30年、100年先を見据えたビジョンを描くデザイン。

 

  •  ③産地・企業の知名度を上げる  → 広報、PRのデザイン


    • 産地と企業の過去と現状を分析し、あるべき姿を見据えて、解決すべき課題を設定する。そして、産地と企業が生み出す価値を明確化し、その創造のしくみと提供の方法を考え、具体化する。大きく変化する時代のなかで、5年、10年、30年、100年先を見据えたビジョンを描くデザイン。

 
 

  •  <ものづくりの創造と提供のためのデザイン>

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  •  ④価値を創造する  → 商品の企画・開発のデザイン


    • どんな商品をつくるのか、どうやってつくるのか。社会や暮らしに必要とされるものを、自分たちの産地と企業が持っている技術、素材、情報、資源などを活かして考える。これまで蓄積したノウハウとネットワークを駆使して、企画し開発することで、次の時代の産地と企業の価値になるものを生み出すデザイン。

 

  •  ⑤価値を提供する   → 流通戦略、販路開拓のデザイン


    • サービスを含む商品の価値を、誰にどのように提供していくのかを考える。お金とものと情報の流れを意識して、マーケットを捉えて、どのように販売していくのかを検討し、販売するための経路を開拓していく。常に変化するマーケットを意識して、継続的に取組むためのデザイン。

 

  •  ⑥つかい手との関係をつくる  → コミュニケーションのデザイン


    • ものを生み出す産地と企業、ものを手に入れて使う生活者。その良好な関係を、どのようにつくっていくかを考える。互いに顔の見える直接の関係を基本にしながら、紙媒体やインターネットを活用して、つかう人に必要な情報を提供する。最終的には、一緒につくりつかうためのコミュニティを目指すデザイン。

 
 

  •  <産地の土壌を豊かにするためのデザイン>

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  •  ⑦地域を活性化する  → コミュニティ、まちづくりのデザイン


    • ものを生み出す産地として、工場の立地や建物、周辺環境を意識して、地域全体の魅力となるようなまちを考える。地域のさまざまな人がつながることで、まち全体がものづくり産地として誇りを持ち、まちの人たちも自分たちの産地のものを使って暮らしていくようなコミュニティのあり方を目指すデザイン。

 

  •  ⑧関係人口をつくる  → 観光、移住、イベント、ツアーのデザイン


    • 産地で暮らし働く人と、それ以外の地域の人がつながるために、どうしたらいいのかを考える。オープンファクトリーやツアー、マーケットイベントなど、産地と企業、そこから生み出されるものと人をつなぎ、そこに訪れたくなる、そして、そこに住みたくなるような回路をつくるデザイン。

 

  •  ⑨デザインを浸透させる → 大学、デザインセンターの設立などのデザイン


    • 産地にデザインをどのように根づかせるかを考える。最初は外部からデザインの専門家を招きながら、自分たちの地域ならではの独自のデザインができるような道筋を検討。大学やデザインセンターを中心に、デザインコンペやデザインイベントを開催し、産地にデザインのできる人材を育てるデザイン。

 

    •  調査分析(調査産地の成功要因)


    • 01 旭川(北海道/木工)

    • ①産地・企業の価値を明確化する
      • 1990年から『国際家具デザインコンペティション旭川』(IFDA)を開催し、国内外のデザイナーから家具デザインを公募している。旭川の木工技術の向上と、旭川が木工産地であることをアピールするものである。ビジョンを明確にしたことで、自社ブランドを推進する企業がある一方、下請け的な事業を行う企業も出てきた

    •  
    • ②産地・企業のブランドをつくる
      • 旭川市は、2019年の「ユネスコ創造都市ネットワーク(デザイン分野)」加盟を活かし、サスティナブルな社会実現に向けて、世界の都市との交流を始め、デザイン活用した産業振興や人材育成に取り組んでいる。

        旭川は当初から、技術とデザインを重視して活動してきた産地である。「旭川木工」というイメージは、ある程度ブランドとして定着している。個々の企業でも、自社ブランドをデザイナーとともに推進している取組みも多い。

    •  
    • ③産地・企業の知名度を上げる
      • 地元のグラフィックデザイナーとともに自社ブランドを見える化して、効果的な情報発信をしている事例が増えている。

    •  
    • ④新製品の企画・開発
      • 年に1度の旭川の見本市に加え、東京や海外の見本市出展に合わせて、新製品の企画・開発に取組む企業が多く、そのほとんどに何らかのデザイナーが関わっている。

      •  
    • ⑤価値を提供する
      • 東京など都心への家具や木工製品販売が中心。販売まで自社で行うところは少なく、ショップに卸したり、ディベロッパーなどのインテリアコーディネーター経由で行ったりする。また、店舗やホテルの造作家具を受注する企業もある。最近ではネット販売による売上げも伸びている。全体にデザイン重視の流通、販売の取組みが多い。

    •  
    • ⑥つかい手との関係をつくる
      • 旭川が家具や木工の産地であることはあまり知られておらず、旭川在住でも家具や木工産地だとは知らない人がいる。一般的な認知度が低いのは、どの産地にも共通した課題である。

    •  
    • ⑦地域を活性化させる
      • 北海道第二の都市と言われる旭川市は、自然豊かで旭川動物園などでも知られ観光客も多い。家具や木工が地域とつながる試みは、少しずつ始まっている印象がある。

    •  
    • ⑧関係人口をつくる
      • 2009年に始まった『旭川木工コミュニティキャンプ』は、ものづくりに関わる人々が集まり交流するイベントである。道内、旭川のつくり手同士の交流は、互いの得意分野を知ることで、仕事を融通する関係を生み、道外のクリエーターとの交流は、デザインへの敷居を下げ、柔軟な関係を築くきっかけになっている。旭川全体が、一つの木工企業のように機能している。

        旭川家具工業協同組合が主催する『旭川デザインウィーク』や『国際家具デザインコンペティション旭川』の開催によって、道内外に限らず木工やインテリアデザインに興味のある人に向けて開かれている。

    •  
    • ⑨デザインを浸透させる
      • 地元の北海道東海大学(現在は閉校)でデザインを学んだ学生は、道内でクリエーターとして就職、独立している人が少なくない。Uターン就職や起業する人もいる。

        『旭川デザインウィーク』や『国際家具デザインコンペティション旭川』を継続的に開催することで、デザイン意識の向上を図っている。

        2017年、旭川デザインセンターがリニューアルし、旭川地域の家具やクラフトメーカー約30社が常設展示を行なっている。

        旭川市は、2019年の「ユネスコ創造都市ネットワーク(デザイン分野)」加盟を活かし、サスティナブルな社会実現に向けて、世界の都市との交流を始め、デザイン活用した産業振興や人材育成に取り組んでいる。

    •  
    • (萩原 修、大沼勇樹記)
    • 02 富士吉田(山梨県/繊維)

    • ②産地・企業のブランドをつくる
      • まち全体でイベントを開催し、知名度を上げている。「ハタオリマチ」としてのブランディングを意識して、マークやロゴを作成している。東京造形大学の鈴木マサル先生、教え子で卒業後もまちに関わっている高須賀活良さんの力も大きい。

    •   
    • ④新製品の企画・開発
      • 現役大学生から提案された生地や製品をともに苦労しながら試作した企業は、それを商品化している。イッセイミヤケなどの著名デザイナーのために培ってきた技術を活かした、オリジナルデザインとなり、販売に成功している。

 

    • ⑦地域を活性化させる 
    • ⑧関係人口をつくる
      • この産地のものづくりツアーなどには、クリエーターや意識の高い観光客などが多く、産地を訪れる機会も多い。ハタオリマチ・バスツアーなどで繊維関係者や織物に興味のある人々を産地に招き、織物への理解を深めてもらい、仕事につながるきっかけづくりを行っている。

        また、この産地は、若者が移住し、能力を発揮できる場がある。地域おこし協力隊で富士吉田に来た赤松智志さんはまちづくりに、東京造形大学の学生の時に産学コラボに参加した高須賀活良さんは、産地の情報発信から始めるなど、若者が産地に入りやすい環境がつくられている。

    •   
    • ⑨デザインを浸透させる
      • 大学とのつながりを仲介することを始めとして、行政のバックアップ体制がいい。富士吉田には山梨県産業技術センターの富士技術センターがあり、技術面やデザイン面の支援に加えて地域内外の人材とのつながりを広げる役割を果たしている。富士吉田市は柔軟に予算をつけて支援している。デザイン系大学と産地企業とのつながり、特に東京造形大学との産学コラボは、商品開発というきちんとした結果を出している。さらに産地の人材確保に結びつくなど、話題になっている。

    •  
    • (影山和則記)
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    • ③産地・企業の知名度を上げる
      • 一般的に産地のサイトは1つか2つだが、この産地には、発信するそれぞれの立場の視点を活かしたサイトがいくつもある。最初は、産地を再発見した若者の感動から生まれたサイトだったこともあり、発信者それぞれの視点が活きている。富士吉田で検索すると、産地を知らない人でも楽しめる。⑥にも重なるが、これがいろいろなイベントやツアーを生み、まちづくりや観光につながっている。

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    • ④新製品の企画・開発
      • 昔ながらの伝統技術もあり、戦後、OEMなどで培ってきた新しい技術も持っている産地企業。こうした経過を熟知した後継者世代は、これまでの技術に、自社の特徴や自分なりのセンスをプラスして、オリジナル製品を開発している。効率よく稼ぐことよりも、自分たちが納得のできる仕事をしたい、と考える人が多い。

        いいきっかけになったのが、東京造形大学との産学連携事業である。

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    • ④新製品の企画・開発
      • 東京造形大学との産学連携事業の始まりは、10年以上前に遡る。山梨県では、それまでも外部の著名なデザイナーに「デザインしていただく」試みを行ってきたが、効果は現れなかった、そこで、産地企業の後継者世代はこの事業を始める前に、東京造形大学の鈴木マサル教授とよく話し合い、仕事面でのやりとりも重ねて、お互いを知ることから始めた。

        鈴木教授も、従来の産学連携事業のような型通りなやり方を嫌い、自身が企業も学生もよく理解した上で独自の進め方をした。企業と学生の組合わせは自分がを決めるなどの一方、現役デザイナーとしてのきめ細かな指導も行き届いている。その結果、伝統技術と新しい着想が融合した作品が生まれ、現在の富士吉田を代表する商品となっている。

    •  
    • ⑥つかい手との関係をつくる
      • この産地でつくられるのは、素材である生地と、それによってつくられる製品である。ツアーはエンドユーザーだけでなく、素材を探しているファッションデザイナーなどのプロ向けにも行われている。時にはバレエ公演の会場に販売コーナーを出すなど、つかう人の目に止まるような工夫も重ねている。

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    • ⑦地域を活性化する
    • ⑧関係人口をつくる
      • この産地は、東京都の距離が比較的近い上に、積極的に取組む姿勢が浸透してきたため、これまでの実績に縛られずに、これからの実績づくりに取組む人が多い。それゆえ、若い人も入りやすく、新しい動きが起こる。それらがいい方向に動いていくのは、山梨県産業技術センターなどの行政のバックアップがしっかりしているおかげだろう。

    •  
    • デザインを浸透させる
      • 地域おこし協力隊から定住促進センターとなり、ゲストハウスや古い倉庫を改装した拠点づくりを進めている赤松智志さんは、地元の中学生にまちの休憩所づくりを指導するなどの活動もしている。産地と関わりがないように見えるが、こうした試みで、次の世代にデザインのおもしろさを伝えている。

    •  
    • デザインを浸透させる
      • この産地では、産地企業、組合、行政、問屋、販売、マスコミなどのそれぞれをつなぎ促進していく、行政の役割が充実している。9つの項目全体にかかるのだが、特に山梨県産業技術センター 富士技術支援センターの働きが見事だ。技術やデザイン面の支援はもちろんのこと、販売や広報面まで「ものづくりの具体化」に力を注ぎ、そうして産地企業の価値を上げ、ブランドをつくり、知名度を上げ、「産地の方向性」が見えるようにしている。ひいては、まちづくりや関係人口づくりにも関わり、まわりの人々ともつながり、「土壌を豊かにする」バックアップも行っている。

        あくまでも「つなぎ手」に徹底し、全体を俯瞰しながら、領域のこだわりを飛び越えて、時には交通整理をし、企業を始め産地に関わる人たちのやる気を促している。

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    • (中野照子記)
    • 03 瀬戸( 愛知県/陶磁器)

    • ②産地・企業のブランドをつくる
      • 行政は、陶磁器産地であることも含めて、「いいもんせともん」をブランディングしている。まちのHPやロゴには、伝統産地としての歴史を見せながら、現在の瀬戸に暮らす人々にスポット当て、より身近なまちを感じさせている。

    •  
    • ④新製品の企画・開発
      • 釜屋や型屋の後継者世代は、それぞれの特質を活かした商品づくりをしている。瀬戸の伝統的な陶器づくりを継承している水野雄介さんは、工房を公開し、その歴史を伝えることにも力を注ぎ、陶器づくりを文化として伝えている。また、大橋正之さんは、創業からデザイナーを起用した斬新な商品づくりにこだわり続けている。

        一方、型屋の吉橋賢一さんは、型屋でしかできない技術を使って、新しいセンスでデザインしたオリジナル商品をつくり、ファッションや雑貨のイベントでも発表し販路を広げている。加藤真雪さんや石川圭一さんは、それぞれ続けてきた釜屋の技術を発展させて、新製品を出している。

    •  
    • ⑥つかい手との関係をつくる
    • ⑧関係人口をつくる
      • 産地企業の跡取り世代は、自分たちの仕事場を巡り、瀬戸のまちを体感するツアーを企画している。ものづくりの過程や楽しみ方などを伝え、つくり手とつかい手の交流を生み出している。

        近年、瀬戸には、陶磁器だけでなくガラス作家やアーティスト、ギャラリーなどが集まってきている。これまで駅周辺で開かれていた陶器市だけに限らず、こうしたさまざまなものづくりに触れられるような企画や情報発信を行っていこうとしている。

 

    • ⑦地域を活性化させる
      • 南慎太郎さんが瀬戸につくったゲストハウスは、観光に訪れる人だけでなく、まちの人々に向けたイベントを積極的に行っている。コロナ禍で駅前の陶器市は中止となったが、陶磁器づくりの材料や道具、製品までを見てもらう、売っていこうという企画を行い話題を呼んだ。

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      •  
    • (田上知之介、中野照子記)
    • 04 美濃(岐阜県/和紙)

    • ②産地・企業のブランドをつくる
      • 岐阜県では、1990年から2000年にかけて、行政は積極的に各産地のデザイン導入が図り、デザイン関連の商品開発、展覧会などのイベントが行われていた。その時に大きな刺激を受けたのが、産地企業の後継者世代や若い手漉き和紙職人だった。

        残念ながらその後、行政レベルのデザイン導入は行われていないが、刺激を受けた産地企業や職人の間には、高い志を持ち実行していく行動力の記憶は残っているようだ。当時の若い世代は中堅世代となった。今は2014年にユネスコ無形文化遺産に登録された美濃和紙産地であることをバネとして、それぞれがそれぞれのやり方で励んでいる。

    •  
    • ④新製品の企画・開発
      • 小規模ながらも、自社で手漉き和紙づくりから加工までできる設備を充実させ、外部デザイナーと協働してオリジナル商品を開発する林一康さん、社内で若いデザイナーから営業マンまで育て、時代時代に合わせた商品開発をする古川慎人さん、オリジナル商品を開発して、古いまちなみのなかにショップを開いた老舗紙問屋の松久恭子さんなど、企業はさまざまな方法で企画・開発を行っている。

      •  
    • ⑦地域を活性化させる
      • 長く地域のまとめ役をしてきた産地企業の辻晃一さんは、古いまちなみに古民家を改装した高級宿をオープンさせたり、自然エネルギー開発に取り組んだり、地域発展に貢献している。一方、商工会議所近くが主催する「美濃和紙あかりアート」は30年近く続いている。制作した人が、美濃の古いまちなみに持ち寄って展示するという、地道な展示。和紙のまちならではの観光となっている。

    •  
    • ⑧関係人口をつくる
      • 岐阜市に事務所を構える蒲 勇介さんは、長良川を軸に、岐阜の魅力を再発見し故郷を活性化させようというプロジェクトを進めている。長良川沿いの古い通りには、美濃和紙始め、岐阜のいくつかの産地の商品を売る店が並んでいる。若い世代によって、地域の新たな魅力が発信されている。

    •  
    • (中野照子記)
    • 05 高岡(富山県/ 金属)

      • 金属は一般的に、木工などに比べて設備コストがかかり、新規参入はむずかしい。そのため、他の産地で金属加工所が新しくつくられる心配は少なく、その分、自社の刷新に力を入れられたという歴史がある。また、木工同様、分業によってつくり上げるものなので、関連するさまざまな業種がこの地にとどまることになったのである。

 

    • ①産地・企業の価値を明確化する
      • 1999年に富山県総合デザインセンターを設立した当時の県知事は、デザインに理解があり、デザインによって地域の活性化ができるというビジョンを示した。

        富山県総合デザインセンターでは、コワーキングスペース、オフィスなどが集まる「クリエイティブハブ」を運営。県内外のデザイナーが集まりやすいしくみをつくっている。2019年には、VR(仮想現実)機器を完備したバーチャルスタジオをオープン。住宅、大型設計物の図面や写真を実寸大で投影できる施設を開設。アルミサッシ金属メーカーや車輌関連メーカーが集積している背景も、多様な可能性を広げる後押しとなっている。

        2020年のコロナ禍の際には、このバーチャルスタジオが、地場産メーカーの動画配信拠点として使用された。

    •  
    • ③産地・企業の知名度を上げる
      • 「高岡は、400年の歴史をもつ鋳物産地である」というブランディングを、自治体をあげて行っている。仏具、銅像、その他の企業は、それをバックボーンに消費地にアプローチしている。

    •  
    • ④新製品の企画・開発
      • 産地内で活躍するグラフィックやプロダクトのデザイナーがいる。産地内で仕事をしているので、きめの細かい情報を連携でき、しかもスピード感を持って仕事を進められる。高岡のキャッチコピーである「ガラは悪いが、腕はいい」は、地元で産地と日々関係を築いているデザイナーだからこそできたのである。

      •  
    • ⑤価値を提供する
      • 仏具はある意味、決してなくならない産業であり、高岡はこのシェアを多く持っている。仏具は衰退の方向にあるが速度はゆるやかなので、他のマーケットを見つけて挑戦することもできる。成功すれば、産地は持ち直す。

        これまでも、1600年代の鋳物工場開設時は、鍋、釜、鍬、鋤などを製造していたが、江戸中期になると仏具や花器など青銅鋳物に彫金を施した唐金鋳物、明治・大正時代は火鉢、茶道具、置物、大型銅像というように、産業の幅を広げてきた。

        このように時代に合わせて変化できるのは、商品の企画・デザインの変遷という下地を歴史的に持っているからであり、それが現在でも産地として生き残っていることにつながっている。

    •  
    • ⑥つかい手との関係をつくる
      • 若手は「クラフツーリズモ」や関連イベントを開催している。産地企業の能作は、工芸産地観光としての場所づくりをし、訪問者を増やしている。

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    • ⑦地域を活性化させる
      • 地元の伝統工芸青年会は、40歳以下の人間だけで構成され、金属だけに偏らない組織である。ただの儀礼的な集まりに終始せず、産地産業にほんとうに必要なことに特化した企画や行動とることができている。

        島谷さんは、曲がる錫をたたくことで強度が増すという新しい視点に注目して開発した「すずがみ」という商品を展開する時に、すでにこの先行商品を出していた能作さんに相談。能作さんはその開発を許容するだけでなく、販路のバックアップにも協力。競争相手である産地企業であっても、地域としての充実発展を見据えた、多様化を育てる風土でもある。

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    • ⑧関係人口をつくる
      • デザインセンターはこれまで、国内のほとんどのデザイナーを招聘し、セミナーやコンペを行うなど、多くの関わりをつくってきた。

        「クラフツーリズモ」では、メディアへの発信やデザインを通して新たな人々を巻き込み、大きな広がりをつくっている。

    •  
    • ⑨デザインを浸透させる
      • この地に美術系大学があることも、若年層とのつながりを深めるきっかけになっている。学内には「クリエイ党」というサークルがあり、毎週、社会人と一緒に商品企画を練っている。この活動は10年以上も続き、延100人以上のメンバーが巣立っている。

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    • (古庄良匡記)
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    • ①産地・企業の価値を明確化する
      • 富山県デザインセンターを設立した時点で、デザインを導入するのが高岡の方向性(生きる道)であるという明確なビジョンが提言されている。

    •  
    • ③産地・企業の知名度を上げる
      • 羽田 純さんは、デザイナーとして初めて、鋳物組合青年部に入った。「ガラは悪いが、腕はいい」などのコピーや、イベントなどにグラフィックデザインを導入することで、ブランドイメージを高めていった。

    •  
    • ④新製品の企画・開発
      • リーディング企業や売上げを伸ばす企業が、産地全体に影響を与えている。能作やフタガミは、リーディング企業として高岡の方向性を示し、刺激された企業は、新商品を開発し売上げを伸ばしている。

      •  
    • ⑧関係人口をつくる
      • ネットワークやコミュニティづくりが頻繁に行われている。高岡クリエイ党や鋳物組合青年部の活動が活発であり、協力し合い、互いに影響しあえる環境になっている。

        また、「高岡クラフツーリズモ」はじめ、ものづくり産地ツアーも積極的に行われている。燕三条の「工場の祭典」とも交流を図り、ものづくりに興味のあるクリエーターや観光客の誘致に成功している。

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    • ⑨デザインを浸透させる
      • 富山大学デザイン学科の学生と鋳物業者がコラボレーションして、高岡クラフトコンペに応募している。入選作が商品化されることも珍しくない。

        また、デザイン教育が充実している。デザインセンターのセミナーやイベント、コンペなどで外部のデザイナーを招くことも多いので、デザイナーにとっても高岡に入りやすい環境になっている。こうした環境づくりは、積極的、継続的に行われている。

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    • (影山和則記)
    • 06 山中温泉(石川県/漆器)

    • ①産地・企業の価値を明確化する
      • 歴史的に木工轆轤を活かした漆器産地であり、特に轆轤の技術発展に特化させている。石川県では、轆轤の専門的な技術を学べる技術訓練校があり、近年では、卒業生のインキュベーション施設(工房)も併設し、新たな職人育成に力を注いでいる。

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    • ②産地・企業のブランドをつくる
      • 木地の材料である木材の買付けは、丸太買いする場合が多いので、小規模の工房にはリスクが大きいことから、材料供給は組合が管理している。木地の材料を組合で買付け・管理することで、大きな工房から小さな工房まで、適切な材料供給を行うことができる。こうした産業安定継続の姿勢が、山中漆器ブランドを産業として安定させ継続させるベースになっている。

        また一方で、我戸幹男商店のように、グッドデザイン賞やReddot賞などの受賞によって知名度を上げてきた例もある。漆工芸 大下香仙工房では、オリジナルアクセサリーを百貨店中心に展開し販路を広げている。産地全体というより、工房ごとにブランディングを図っている。

    •  
    • ④新製品の企画・開発
      • 我戸幹男商店を筆頭に、産地問屋のプロデュースによるデザインを活用した商品展開が行われている。過去には富田一彦さんがデザインしたNUSSHAで海外の販路を開拓したアイプラスの例もあり、商品開発〜見本市展開という流れがある。

      •  
    • ⑤価値を提供する
      • 木地の材料を組合で買付け・管理することで、大きな工房から小さな工房まで、適切な材料供給が行われている。

    •  
    • ⑥つかい手との関係をつくる
      • around 巡る 温泉郷」というイベントが企画されている。

        漆工芸 大下香仙工房は、ddと組んでワークショップを開くなどして、消費地においてデザインと工芸の接点や融合を披露、つかい手との関係をつくっている。

    •  
    • ⑦地域を活性化する
      • 「around」イベントでは、顧客とのリレーションを図っている。

    •  
    • ⑨デザインを浸透させる
      • 石川県では、早くから県の事業として、中央からデザイナーを招いてきた。

    •  
    • (古庄良匡記)