• 産地とデザインの関係は、明治初期、工藝が輸出産業として振興されて以降、その歴史が始まった。ものづくり産地は、手仕事による工藝技術の工業化、産業化を図るなかで、デザインの活用に取り組んできた。国は1974 年に伝統的工芸品産業の振興に関する法律、いわゆる「伝産法」を制定し振興策をスタートした。これは紆余曲折を経て現在も継続されている。2000 年以降、このような産地を新たに支援すべく、経済産業省によるジャパンブランド事業など、産地へのデザイン導入が進められている。さらに国や地方自治体からは地方創生による地域活性化のための支援策も数多く示されている。しかし実際には、明治以前から継続されてきたものづくり産地は、バブル崩壊以降、売上げは減少する一方であり、後継者不足などの多くの問題を抱えているのである。
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    • 産地があるべき姿になるためにはデザインはどのような役割を果たすのか。デザインそのものの概念が広がるなかで、産地ではどのようにデザインが活かされるのがよいのか。本研究は、ものづくり産地におけるデザイン活用を調査分析し、産地においてデザイン活用するための「しくみ」を提案することで、産地に関わるすべての人の幸せに寄与することを目的としている。
 
 

 
    • 「産地」と「デザイン」


    • 研究にあたり、「産地」と「デザイン」を次のように定義した。
    • 「産地」とは、同一の地域、文化的背景の元で同じ分野の製品を製造し、販売している、主に中小企業が集積している地域のことである。
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    • 産地における「デザイン」とは、個々の企業が事業を推進するための経営方針、組織、マーケティング、ブランディング、商品企画、製造、流通、販売、コミュニケーションなどに活用されるだけでなく、産地が継続して良好な状態を維持、発展するためのものである。さらに産業振興だけでなく、まちづくりの活動や教育、観光などとも連携し、地域課題を明確にして、地域資源を活かすことで、産地を魅力的で暮らしやすいエリアにしていくことに活かせると考えている。
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    • 産地にデザインを活かすためには、産地内外の専門的なデザイナーだけではなく、多くの関係者が、地域の文化を見据え、産地のデザインを意識して、つくり手とつかい手との良好な関係を考え、活動することが大切である。組合や行政、支援機関、教育機関などが連携し、企業や従業員が活動しやすい状況であり、企業の後継者や移住者を受け入れ、他の地域とも協働できる開かれた産地である必要がある。